どこまでも広がる晴れ渡った青い空。 透明度が高く、鮮やかな青い海。 地中海性気候による乾いた風と、焼けつくような眩い陽射し。 浜辺に立てた日除けの白いパラソルの下、二つ並べて置かれたデッキチェアに身を横たえて、冷えたビールの瓶を片手に南国の海辺の景色を眺めれば、それはいかにも優雅な夏の休暇だと思えなくはないのだが。 「……ったく、何が悲しくて男二人でビーチに寝てんだよ」 獄寺はぶつくさと独り言をつぶやきながら、サングラス越しに目の前の光景を睨んだ。いや、正確にはたった今、海から上がってきたばかりの山本がこちらに歩いてくるのを見て、視線を尖らせたのだ。 「獄寺も泳いでくればいいのに。すっげー気持ちいいぜ」 山本は満足そうに笑いながらタオルでごしごしと水気を拭き取り、隣のイスに腰を下ろした。 昔ほど日に焼けてはいないが、普段スーツの下に隠されている鍛え抜かれた体躯を潮風に晒してくつろいでいる姿は憎らしいほど様になっている。 一方の獄寺は水着ではなく、麻のシャツとゆったりしたハーフパンツを身に着けていた。 「やなこった」 泳ぎはわりと得意なほうだ。遠泳にも自信はある。だが残念なことに、母親に似たキメの細かい白い肌は日に焼けるとすぐに赤く腫れてしまい、ヒリヒリと痛むため、わざわざこんな陽射しの強いところでは泳ぎたくない。 姉のビアンキに軟弱者といまだに嘲笑されてしまったりもするが、日焼けなど物ともせずに日光浴をする太陽が大好きなイタリア人の血は、自分の中にはあまり流れていないのだろう。むしろずっと野球バカだった山本のほうが普段から山ほど陽射しを浴びているせいか、やたらと元気に見える。 「だいたい海水浴なんて日本でもどこでもできるだろ」 手にしている経済誌に視線を戻し、顔を上げずに答えると、横から伸びてきた手にひょいとその雑誌を取り上げられてしまった。 「あっ、こら……」 「こんなとこで読んでると目ェ悪くするぜ?」 「よけいなお世話だ。返せ!」 「だーめ。なぁ、少しは一緒に泳ごうぜ。せっかくこんないいところに来てるんだしさ」 確かにここは楽園と呼んでいい場所の一つかもしれない。 昨日のうちに事件の事後処理と報告をすませた彼らは、今朝シチリアを離れ、本部が所有する高速艇で地中海に浮かぶ離島へとやって来た。日本ではまださほど知名度は高くないが、この小さな島はヨーロッパの人々に避暑地として人気があり、シーズン中は大勢の観光客がバカンスに訪れる。 事実、首都であるヴァレッタという町はかなり人口が多く、賑わっていた。 それでも今、こうして静かな浜辺で他人の目を気にせずくつろいでいられるのは、ここがプライベートビーチだからだ。 島の周囲は岸壁のほうが多く、数少ない砂浜のほとんどは大きなホテルの専用ビーチとして使用されている。どのみち島内のホテルはどこもボンゴレの息がかかっているのだが、それだけでなく本部は島の一角である広大な土地や別荘と共に、浜辺の一部をプライベートビーチとして所有していた。 歴代の首領や守護者たちもよく利用していたという憩いのヴィラだ。 今週はちょうどお盆休みの真っ只中で、日本支部の連中もそれぞれ休みを取っている。そのため無理をして戻ることもないだろうと、山本の提案に乗ってここを訪れたわけだが。 「着替えるのが面倒なら、そのままでいいから来いよ」 サングラスをするりと外され、デッキチェアに放り投げられた。 「ちょ……おい!」 (まさか) 腕をつかまれ、強引に水際まで引っぱり出されて嫌な予感が胸をよぎる。 「泳がねーって云ってるだろ。離せって!」 しかし、抗うのが少しばかり遅かったようだ。 「う、わ…っ!」 打ち寄せる波と砂に足を取られてよろけそうになったところを思いきり引き倒され、あっさり砂地に肘や尻餅をついてしまった獄寺は、一瞬でずぶ濡れになってしまった。 ざばっと勢いよく波を被って、髪からも頬からも海水が滴り落ちる。 「…………て、めぇ」 「な、気持ちいいだろ?」 笑い声を立てられてムッとしたが、確かに海水に浸かった腰から下はひんやりとして、強い陽射しの下では気持ちがよかった。 「だからってなぁ、服着たままで泳げってのか?」 「んー、そうだな……」 向かい合う方向で、すぐ隣に腰を下ろした山本が、獄寺の乱れた髪を手櫛で梳く。 「脱いでないほうが逆にエロいってのは困るな」 低く抑えたつぶやきに、ぎくりと身体が固まった。 海水に濡れた服はぴたりと肌に張りつき、うっすらと透けている。その肢体をじっと見つめてくる山本の眼がやばい。 「バ……バカか、ったく! どーしてくれんだよ。こんなに濡れ……て」 「いいじゃんか」 立ち上がろうとした獄寺の肩を押し戻して、覆い被さってくる。 「どうせ濡れちまったんだから、もう気にすんなよ」 「な…………んっ! うぅ……」 囁きと共に抱きしめられ、唇を塞がれた。 のしかかってくる山本の身体をどうにか払いのけようとしたが、しっかりと腰を抱えられてしまって果たせず、舌を絡め取られる。 「……んんっ、ぁふっ」 仕事に専念している間は全部お預けにしてしまうので深いキスは久しぶりだ。そのせいか、気づけば獄寺の両手は山本の背中に回っていて…………しまった、軽く膝蹴りぐらい入れてやるんだったと後悔した時には、さんざん口腔の内側を舐め回され、舌を吸われた後だった。 そうしている間も繰り返し寄せては引く波が下肢に纏わりついて、そのたびに波に運ばれてきた砂も肌を撫でていく。山本はその砂をひと握り片手でつかむと、キスを続けながら、波が引いたタイミングで獄寺の脚にそっと擦りつけてきた。 「……っ!」 すぐに水に流れてしまうとはいえ、大きな手のひらでハーフパンツからはみ出した腿を砂と一緒に撫でられるその感触は、ベッドで触られる時とはまた異なる、微妙な感覚を呼び起こす。 もちろん山本は煽るつもりで、わざとやっているのだ。何度も。 「よせって…………砂が」 背筋にぞくぞくと震えが走った。 「ああ、隙間から中に入るのが気持ち悪ぃのか。だったら脱げば?」 「何云ってんだ、こんなとこで……ぁ」 「相変わらず堅ぇな、そーゆーとこ」 ようやくキスが唇から離れた隙に訴えてはみたものの、くすりと笑われて。滑る舌先が耳の穴に潜り込んでくると、もう言葉は途切れてしまう。 「……あ、あ、それ……やっ……」 だが山本は行為を中断するどころか、周囲に人目がないのをいいことにズボンの裾から入り込ませた手で中心を弄り始めた。 「やめ…っ!」 「一緒に泳ぐのと、このまま一緒に気持ちよくなるのと、どっちがいい?」 「ふ、ざけるな…………どっちも却下だ!」 「ホントに?」 「……ぁ、んんっ……」 布地を押し上げている竿を握られ、その形を意識させるようにわざとゆっくり扱かれる。 「この意地っ張り。だいぶ硬くなってきてるぜ?」 「うるせ…………あっ、あぁ…ん!」 必死に身を捩っても、そのたびに波が足元を掬うのでなかなか逃れることができない。衣服を身につけ、しかも下肢は海に浸かっているから分かりにくいが、そうでなければ先端から雫がこぼれ落ちている頃だろう。 ぴくぴくと震えている獄寺の雄芯がそう告げている。 「どうせ誰もいないんだから場所なんか気にすることねぇのに」 「そういう問題じゃねーだろ。も……離せって!」 このまま弄られ続けていたら、ここで達してしまいそうだった。 いくら南国のリゾートに来ているからといって、解放されすぎだと山本のニヤケた面を睨む。 こうなったら本気で一発殴ってやろうと拳を握った、その時。――――ふと、どこからか視線を感じて、獄寺は動きを止めた。 周囲を見回してみても人影はない。それも当然だ。敷地はかなり広いし、簡単には忍び込めないようになっている。民家やホテルが隣接しているわけでもないので、偶然覗かれる可能性はまずないだろう。 それでもセキュリティをかいくぐって来る輩がいないとは限らない。 「おい、今……」 誰かが覗いていたようだと主張する前に、山本もまた、突然いたずらの手を止めた。 「やっぱ予定変更。泳ぐのは明日にしようぜ。まずはバスルームに直行だ」 「え?」 驚くほどあっさりと離れていく腕に拍子抜けしながらも、おまえも気づいたのかと目線で問えば、 「夜まで待てねーや」 返ってきた答えの厚かましさに、今度こそ獄寺の血管はぷつりとキレそうになった。 別荘の風呂場も眺望は抜群で、大きな窓から地中海に沈む夕日を臨むことができる。 こちら側の窓が面しているのはビーチではなく岸壁なので、リビングやウッドデッキから覗く景色とはまた違う景観を楽しめるようになっているのだ。 もっとも今、獄寺にその余裕はなかった。 「あ、あ、あ……っ」 特注に違いない大きなバスタブの縁にしがみついて、淫らに喘がされているからだ。 「……っく、うぅ…ん!」 「おい、そんなに締めるなよ」 「んなの……して、ねー………あっ、あ」 浜辺からバスルームへと連れて来られる時、もちろん獄寺は遠慮なく鉄拳を振るった。調子に乗るな、と。 だが、すでに身体の芯に火を点けられていたせいで、そのままにしておくほうがかえって辛い状態で、結局山本のペースで事が進んでしまっているのだ。 侵入者の可能性も示唆してみたが、山本は取り合わなかった。もっともバスタブに湯を溜めている間、飲み物を取りに行くと告げてしばらく戻ってこなかったから、ひょっとすると一人で邪魔者を排除してきたのかもしれない。 まぁ何も云わないのだから、ボスに報告しなければならないような相手ではなかった、ということだろう。 戻ってきてからはおしゃべりをする隙も与えられずにあちこち弄り回され、海水でベタつく肌をボディソープで洗うついでに、よけいなところまで念入りに洗浄された。長い指でさんざん入り口や中を擦られ、掻き回された。 「……あぁっ! やっ……ぁん」 そして今は、山本の怒張したモノで深々と後ろの蕾を刺し貫かれているのだ。半分ほど湯を張ったバスタブの中で膝立ちになり、ぐっと腰を後ろに突き出した恥ずかしい格好で。 「はっ…ぁ」 湯の量が少ない上に、やたらと広い浴室なので、いきなりのぼせることはないが、獄寺はすでに二回達かされているのでかなり息が上がっていた。 「まだイクなよ?」 快感が高まってくると、たまに根元をきつく握られて堰き止められるが、どのみち三回目ともなればあっさり達くことはできない。 背後から穿たれた楔を奥深く突き挿れられるたびに、どうしても身体が前後に揺れるので、バスタブの中の湯も波立つ。ちょうど水面が脚の付け根あたりの高さなので、繋がっている箇所に当たる湯の感触や音にかなり羞恥心を掻き立てられたが、結合部分から洩れてくる淫靡な音をある程度消してくれるのはありがたかった。 ただし二人分の荒い呼気と、獄寺自身が発してしまう艶めいた喘ぎだけはどうにもならない。耳を塞ぐことができないのだから。 「ひっ……ん、やぁ…っ!」 大きく腰をグラインドさせながら、山本の手はさっきからずっと獄寺の胸の突起を嬲っていた。ぷっくりと膨らんだ突起を指の先でぐりぐりと摘んだり、押し潰したり、強く引っ張ったりして、敏感な箇所を苛め続けているのだ。 「あぁ、ぁっ…………そこ、ばっかり……いじる、な」 「気持ちよすぎるか?」 「ばか、違っ……ぁ、ん…………痛いんだ」 「それも悦いんだろ。ジンジンして、たまんない?」 いやらしいセリフを吐きながら、山本は腰も指先の動きも止めてくれない。 ※ ※ ※ 夏なのでリゾートです!エロです!(爆) ずーっとイチャイチャしてます…orz
大人山本様、好き放題やってます!なんでうちの山本ってこんなに黒いんだ〜(汗) しかも今回、捏造設定がいつもよりさらに過多となっております。ゴメンナサイ…。 山本の経歴とか職業……きっと原作では違う!と分かってはいるんですが、 今回はあえてそれを選択してみました。オチのために(笑)←読んで頂ければ 何のことかすぐ分かります…^^;) まぁ要するにただのアホな話なんですが、 いつもどおりラブラブしてますので、お気軽に手に取って頂けると嬉しいです<(_ _)> 2009.8.14 初出し A5 44P オフセット @500−/2009.7.27 内容紹介UP |