「今日の右腕」 〜2011年度ver.〜
<内容紹介>

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報告書「今日の右腕」2011年度版File,XX <極秘資料>
報告者:ボンゴレの右腕を支える会 ナンバー002


9月8日――――

 この日は朝から嫌な空模様でした。
 夏の名残を感じさせる湿った空気が暑さで肌に張りつき、不快感が募ります。事務所内は冷房が効いていますが、今年は節電対策のため一般企業と変わりなく我らボンゴレ日本支部でも(地下アジトはともかく地上にあるビルのフロント企業内では)温度調節厳守が言い渡されているため、設定温度を下げることはできません。
 むろん一般兵士たちがいるフロアだけでなく、ボスの右腕である獄寺専務の執務室も同様です。
「今日はやけに蒸すな」
 ため息と共につぶやいた獄寺氏の襟元にネクタイはありません。本日は来客予定もないため、襟元のボタンも一つ余分に開いています。
 それだけならいいのですが、今日はアンダーも身につけていらっしゃらないので、白いシャツから透けて見えてしまうのです。胸のあたりが。ご本人はあまり気にされてはいないようなのですが。
「台風が近づいてますからね。午後からひと雨きそうですよ」
 雨の守護者が不在でよかった。
 なんとなくそう思ってしまったのは、先月アンダーを着るか着ないかで、お二人がここでケンカをなさったからでしょう。しかもその後、かの雨男は人払いと称して私や他の部下を追い払った挙げ句、執務室でセクハラを実践したらしく、戻った時には獄寺氏の頬や目許が赤く染まっていました。心なしか瞳まで潤んでいて、いっそこの私が押し倒したい………………失礼。十文字削除。
 とにかく面倒なことになるに違いないので、もう少し自重なさって欲しいものです。
 このレポートを読まれている諸氏にも同じように感じておられる方は多いはずですが、万が一喫煙ルームで獄寺氏に遭遇しても、あからさまに指摘などされませんようご注意願います。拗ねて意固地になられると逆効果ですから。
 また、いくら透けて見えるピンク色の乳首が挑発的だからといって、仮にもボスの右腕に対して我々が疚しい気持ちを抱くのはやはり褒められたことではありませんので、決して表情などに出したりせず、そういった感情は胸の内に秘めておいてください。
 …………と言ってるそばから、書類を届けにきた兵士二人の視線が先程から獄寺氏の胸元に集中してしまっているのですが。
「今日は暑いですね」
「え……ええ、そうですね」
(二人とも、ガン見しすぎですよ)
 警告の代わりに冷たい笑顔で話しかけてみたものの、二人は右腕の乳首に夢中でこちらを振り向こうともしません。心なしか呼吸もやや荒いような気が……
「んー、ここの数字は伸びねぇなぁ」
 しかし当の獄寺氏は部下の視線など意に介さず、ビジネスに心を砕いておられるようです。ご自分が視姦されているとも知らずに。
 きっと彼らは今、脳内で邪魔な衣服を剥ぎ取り、右腕のしっとりした白い肌を思う存分撫で回しながら、あのピンク色の突起にむしゃぶりついていることでしょう。乳首を強く吸ったり甘噛みするだけでなく、想像の翼をはためかせて、わずかな時間にもっと秘めた部分―――――後孔への挿入から激しい律動、中出しまでを脳内作業で完遂しようとしているのかもしれません。
 気持ちは分かります。
 獄寺氏の強さを畏れる一方で、呼吸を乱した姿や頬を染めた表情などを見てみたい、あられもない声を上げさせてみたいという願望を持つ者が決して少なくないのも事実。
 ですが、側近である秘書の私が傍らに控えているにもかかわらず、堂々とそのような視線を右腕に向けるとは。
「……成敗」
 密かに内線を回して一言つぶやくと、たちまち執務室のドアが開いて秘書課のメンバー五名がやってきました。
「失礼致します」
 笑顔で彼らの腕を取り、ずるずると引きずっていきます。
「えっ?」
「ちょ……なんだ、おい?」
「火急の用件が入りましたので、こちらへお越し願います」
 秘書課ならではの鉄壁の笑顔で不届き者の抵抗を阻み、そのまま室外へ。
 駆除成功。
 彼らはこれから数時間かけて煩悩が消え去るまで雑務に没頭するはめになるでしょう。こうしたケアもまた、我々の任務なのです。
 身に覚えのある方々はくれぐれもご注意を。部下である私たちに許されているのは、シャツから透けて見えるうっすらとしたピンク色をそっと横目で眺めてハラハラするか、密かに回ってきた写真で想像を愉しむか。そのどちらかなのですから。(添付写真参照)
 失礼、話が横道に逸れてしまいましたね。
 まぁこのように多少面倒事があったとしても、今日は一日平和に過ごしていけるかと思っていたのですが、マフィアの世界はそれほど甘くありませんでした。
 ほどなくして港に近いエリアを任されている第三部隊のサブリーダーが、緊張を面に漲らせて駆け込んできたのです。
「失礼します。獄寺さん、例のヴィオットファミリーがまた動き出しました」
「……やっぱり何か仕掛けてきたか」
 獄寺氏はすぐさま眉を寄せてチッと舌打ちすると、立ち上がりました。
 皆様ご承知の通り、ヴィオットファミリーとは最近何かと衝突が続いている組織で、一番の問題は大規模に薬物の売買を行っていることと、そのために港周辺を管理している我々の兵士を襲撃してきたことです。ヴィオットは薬物をバラ撒くことで闇社会のマーケットも荒らしていたので、ここ最近、右腕をいらつかせている原因となっていました。
 ボスから正式な文書で警告が出されているはずですが、相手はどうやらボンゴレを嘗めているようで。
「今朝入港した船から不審な荷物が発見されたと連絡が入ったので、第一班に検閲を命じたところ、どうやらかなり手荒な歓迎を受けたようです。緊急コールが入ったので残りのメンバーも港に向かわせましたが、人数的に不利かもしれません。現在も交戦中です」
「ったく、ふざけやがって」
 当然ながら、右腕たる獄寺氏の機嫌はMAXで急降下です。
「ボスに報告は?」
「今、うちのリーダーが」
「よし、まずは港の一般職員の避難が優先だ。部下にそう伝えろ。すぐに応援が行くからそれまで持ちこたえろとな」
「はっ!」
 サブリーダーが駆け出していくと、彼もリングと匣を手にしました。
「安永、第七部隊にも招集かけろ。デカイ武器は必要ねぇ。準備が出来次第、港に急行する」
「了解しました」
「それから匣持ってる奴を十人くらい臨時で集めとけ。仮にもボンゴレとケンカしようってんだ。あの連中も丸腰じゃねーだろ」
「他の守護者たちに連絡は?」
「必要ねぇよ」
 俺一人で充分だ。
 静かな横顔で告げると、彼は部下を引き連れて「戦場」へと赴いたのです。



             ◇◇   ◇ ◆◆ ◇   ◇



「……なぁ、本気でするつもりかよ。まだ昼間だってのに」
 予報どおり天候は徐々に崩れだし、車でマンションに帰りつく頃には雨が降り始めていた。どうやら台風の進路は少し逸れたようだが、このまま夜まで雨は続きそうだ。おまけに寝室はきっちりカーテンが閉められているので、わずかな光も入らず、かなり暗い。とはいえ時刻はまだ二時を過ぎたところだ。
「俺は着替えたら仕事に戻るつもりでいたんだけどな」
「誰かさんはワーカホリックだからな」
 口許を少し歪ませて苦笑すると、山本はまたしてもシャツの上から胸の突起を弄りだした。
「賢いくせに、こういうことだけすぐに忘れちまうし」
 ――――だから、今から思い出させてやるよ。
 艶を含んだ低い声が鼓膜を震わせる。
「どういう……意味……っ」
 耳元で囁かれてぞくりと肌が粟立った。
 見下ろしてくる漆黒の双眸が情欲に滾っていて、獄寺を無意識に怯えさせるのだ。しかし逃げたくても身動きが取れないので、身体の位置をずらすことさえほとんどできない。
「こうやって濡れてるとさ、よけいに目立つだろ」
「それほどじゃ……あっ、あ……」
 敏感な突起を遠慮なく摘まれて、思わず上擦った声が洩れた。
「あそこにいた連中のうち何人が頭ん中でおまえにこういうことしてたか考えるだけで、俺ちょっと刀抜きたくなっちまうんだけど」
「……っく、ん……んん!」
 両手の親指で左右同時に捏ね回されて、唇を噛む。
「ほら、ちょっと触っただけで先っぽがクリクリしてこんなに硬くなってるし。ちっちゃいのにすげぇ目立ってるぜ。やらしーなぁ」
「そ……なの、誰だって」
「同じじゃねーよ。普通と違って獄寺のは色もきれいなピンクだしさ、ツンと硬く尖った時なんか、強く引っぱっただけでもこうやって……」
「あっ! いっ……ああ、ぁ…っ!」
 軽く爪を立てながら強く引っぱられて涙が滲んだ。
「な? すっげー感じちゃってるだろ?」
「うるさ……ぁ」
 否定しても確かに息が上がっているし、あやしい熱が下腹のあたりに集まりつつある。隠すこともできないから一目瞭然だ。
「まぁ、やらしくしたのは俺なんだけど。隼人は最初っから感度よかったからなー」
 なぜかちょっと悔しそうな言葉と共に、シャツのボタンが引きちぎられて飛んだ。これでもう獄寺の身体を覆い隠すものは何もなくなってしまった。おまけに胸元の突起はすでにいろいろと弄られているせいで、紅く色づいている。山本はためらうことなくその片方を口に含み、舌で転がし始めた。
「やっ……あ、あぁ…ん」
 正直この愛撫には弱い。口中でぬるぬるにされて舌先で突付かれると、ぞくぞくと背筋が痺れるのだ。
「……あっ…ん、やだ……」
 弱いと知っていて交互にそれを繰り返す山本に嫌だと主張しても、ニヤリと口角を片方持ち上げて笑うだけで、むしろ強く吸われてしまった。
「思い出したか?」
「なに、を?」
「ここだけ弄られて、泣きながらイッたことあるだろ?」
「……っ!」
 しかも一度きりじゃないんだぜ、と嬉しそうに言われても獄寺は覚えていない。脂下がっている男の顔を思いきり蹴り飛ばしてやりたかったが、この体勢では到底無理だ。仕方ないからぎゅっと目を瞑って、熱く火照った頬を隠すようにめいっぱい顔を背けた。



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2011.9.18 初出し A5 32P コピー誌 @300−/2011.9.17 内容紹介UP






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